- 柳川の南西に広がる有明海。日本でも最大の干満差で知られる有明海には、九州最大の筑後川をはじめとし、矢部川、鹿島川、塩田川、六角川、嘉瀬川など多くの河川が流入するため、豊富な栄養が流れ込みます。これらの河川から流入した土砂や堆積物は、干潮時には堆積し、満潮時には侵食され、それがくりかえされることで、干潟が成長し平均水深20mという遠浅の海です。筑後川の河口周辺は干潮時になると、海岸から6kmという遥か沖合いまで干潟が続きます。
- 初夏の暖かい時期になると、干潟の上はぴょんぴょんと跳び跳ねるムツゴロウやトビハゼ、シオマネキという小さなカニの姿で賑わい始めます。
- そんな独特の特徴を持つ有明海に面した柳川は、海苔の養殖や漁業も盛ん。宝の海と言われていた30年ほど前から比べると、漁獲量はその数パーセントと減りましたが、今でも有明海の珍味としてここでしか見られないたくさんの魚介類があります。姿形も珍しい魚介が魚屋さんや朝一などに並ぶその光景は、まるで博物館のような面白さです。
- 有明海では、クラゲやイイダコ、ワタリガニ、アカエイなどが、今でも水揚げされますが、その中でも特有の魚介といえば「ワケノシンノス」と地元で呼ばれている「イソギンチャク」。コリッとした食感が特徴で、味噌煮や味噌汁、から揚げなどでいただきます。クッゾコと呼ばれる「シタビラメ」は、靴底のような形をしていて、身離れが良く、煮付けや、刺身、唐揚げでいただくのが美味。「ワラスボ」は、口からは鋭い歯が飛び出し、目は退化しているため、よく見ないとわからないほど小さく、その独特な姿はまさにエイリアン。干したものを火で炙って食べたり、お酒に入れても。黒く太い象の鼻のような見た目をした「ウンタケ」と呼ばれる二枚貝「海茸(うみたけ)」や「タイラギ」と呼ばれる「タイラギ貝」の貝柱は、かつて豊富に採れていたことから、長期保存ができないかと誕生した粕漬けが、今でも酒のつまみや柳川土産として人気の逸品です。
- 6億年まえから生存し、地球上で最も古い「生きた化石」と言われるミドリシャミセンガイは、地元では「メカジャ」と呼ばれ、味噌汁や煮付けでいただきます。一見、貝のように見えますが、貝ではなく腕足動物に分類され、その殻は、綺麗な緑色をしています。
- なかなか他の海では見られない独特な生態系をもつ有明海の魚介を使った料理の数々は、うなぎのせいろ蒸しと合わせて一度は味わって欲しい柳川の郷土料理です。
- 柳川に来たら、有明海の珍味を堪能するのも楽しみの一つですが、柳川には県内でも3位の取扱高を誇る、筑後中部魚市場があります。有明海で水揚げされたばかりの地物から、日本や世界各地からたくさんの魚介類が毎日のように大集結します。まだ空も暗い早朝4時頃から、県内だけではなく、長崎など県外からも魚屋さんや、仲買人がセリに参加するため続々と集まり始めます。セリが始まれば、市場内の活気は一気に高まり、早朝とは思えないほど。市場中に並んだたくさんの魚介は、セリが進むごとにみるみるうちになくなっていき、空がすっかり明るんだころには、それまでの賑わいが嘘のように静けさを取り戻します。
- そんな市場がある柳川には、魚屋さんや魚料理を出す店を多く見かけます。いけすを持つ飲食店も多く、魚介の新鮮で濃厚な美味しさが味わえます。市場で競り落とされた魚介はその日のうちに市内の店頭にも並びます。新鮮な海の幸を柳川のお土産としてもぜひ。
柳川おでかけWeb
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11月・霜月
文学と食の魅力にふれる秋の柳川です。
全国でも佐賀県に次ぐ生産量を誇る有明海産海苔。収穫の季節到来です。/有明海は漁業も盛ん。ワタリガニに、イイダコに、アカエイなどなど魚種も豊富です。/市内の市場は早朝からセリの声が飛び交います。/有明物産公園で行われる「柳川よかもんまつり」は、柳川のよかもん、うまかもんが勢ぞろい。/11月2日は、柳川出身の日本を代表する詩人、北原白秋の命日。白秋祭水上パレードのフィナーレの花火は圧巻の光景です。/秋の川下りも紅葉に染まった堀割りの景色に癒されます