- 柳川で生まれ育ち、柳川をこよなく愛した日本を代表する詩人・北原白秋。文学の道を志し上京後、学生時代から才能を発揮していた白秋は、まもなく多くの文人たちから賞賛され、新進気鋭の詩人として注目を浴びました。そんな中、1907年には7月から8月末にかけて、与謝野鉄幹に連れられ、太田正雄、平野万里、吉井勇とともに、5人で九州旅行へと出かけます。車中泊をしながら西へと下り広島、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本を巡りました。この旅行中に一行は、酒造を営む北原白秋の実家にも2回訪れます。白秋の両親は、地の酒と有明海の幸でもてなしました。滞在中は酒造の見学や川遊びをしたり、遊女屋へ行ったりと柳川を満喫しました。その旅の紀行文「五足の靴」は、8月7日から9月10日にかけて「東京二六新聞」に匿名で投稿されました。この旅の中で、切支丹文化にふれた白秋は、南蛮文学の先駆けとなる処女詩集「邪宗門」を書きあげ、継いで故郷柳川の思い出を描いた抒情曲集「思い出」を生み出しました。
- 五足の靴の5人も楽しんだ川遊びは、白秋の青年時代を描いた映画「からたちの花」で一躍脚光を浴び、全国的に知られることとなりました。この川遊びは柳川で川下りへと発展し、現在も多くの観光客が川下りを楽しんでいます。
- そして、白秋の命日11月2日を挟んだ前後3日間、約80艘ものどんこ舟が赤い提灯に彩られた夜の掘割を一斉に下ります。掘割沿いでは、ブラスバンド演奏、コーラス、琴、太鼓、雅楽演奏に加え、県無形文化財・どろつくどんの披露など、たくさんのステージが用意され、夜の掘割を華やかに盛り上げます。沿道からは地元の人びとから歓迎の声が飛び交い、子どもたちも花火で舟を歓迎します。
- どんこ舟には、お弁当やお酒、鍋やバーベキューなど、それぞれ思い思いの食材を持ち込み宴を繰り広げます。川下りしながら花火をしたり、沿道の子どもたちに花火やお菓子を渡したりと、和やかな雰囲気に包まれます。最後はかんぽの宿横にどんこ舟が集結し、打ち上がる花火に歓声や拍手が沸き起こります。
- 白秋祭が終わると、毎年北原白秋の誕生日の1月25日には、母校矢留小学校の生徒さんの鼓笛隊が赤いチョッキと帽子に身を包み、白秋生家から沖端を1周し、白秋詩碑苑までをパレードします。パレードの後の記念式典では、生徒さんの詩の朗読や童謡の合唱、花や白秋が好きだったお酒を捧げ、最後には参加者全員で柳川への思いがつまった「帰去来」を合唱し白秋を偲びます。盛大に行われる白秋祭とはうってかわり、しっとりとした雰囲気に包まれる白秋生誕祭です。
- 帰去来
- 山門は我が産土
- 雲騰る南風のまほら、
- 飛ばまし、今一度。
- 筑紫よ、かく呼ばへば
- 恋ほしよ潮の落差
- 火照沁む夕陽の潟。
- 盲ふるに、早やもこの眼
- 見ざらむ、また葦かび、
- 籠飼や水かげろふ。
- 帰らなむ、いざ、鵲
- かの空や櫨のたむろ、
- 待つらむぞ今一度。
- 故郷やそのかの子ら
- 皆老いて遠きに、
- 何ぞ寄る童ごころ。
- そして2015年、北原白秋の生誕130周年を迎えます。
柳川おでかけWeb
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11月・霜月
白秋祭におにぎえに、祭りに染まる秋の柳川。まち歩きにも気持ちの良い季節です。
毎年1月25日に行われる白秋生誕祭の記念式典で歌う、母校矢留小学校の生徒たち/白秋祭の夜の掘割を賑わわせる沖の石太鼓/演奏に合わせて白秋が残した童謡の合唱も/5人の文人達が訪れた懐月楼跡に立つ五足の靴記念碑/柳川城址のイチョウも秋の装いに/川下りコース沿いも紅葉が色づき水面も華やかに/柳川よかもんまつりでの名物イベントジャンボ巻き寿司作り/第10代横綱雲龍久吉を讃え雲龍の館で行われる少年相撲大会