- 神社の秋祭りの日、柳川市内では風流と呼ばれる五穀豊穣祈願や、かつて困難を極めた干拓事業に由来する伝統行事が行われます。古くは鎌倉時代から続く鷹尾神社風流や室町時代から続く上宮永風流を始め、そのほとんどは江戸時代から次の世代へと脈々と受け継がれており、江戸時代に著された随筆集「兎園小説」にも、柳川の風流が取り上げられています。地域の子どもの人数や状況などによって変わることもありますが、主に行われている地域は、古賀、藤吉、今古賀、江上神社、上宮永、北徳益、鷹尾、皿垣、野田ですが、2014年は野田と皿垣を除いた7地域で行われます。今古賀、古賀の風流は福岡県の無形民俗文化財に、藤吉の風流は市の無形民俗文化財に指定されています。
- 秋祭りの日には、「シャグマ」といわれるかぶりものや、袴、手袋など独特の衣装に身を包み、鉦や太鼓に合わせて舞を披露する子どもたちの姿や、町内を練り歩く御神幸行列を町のいたるところで見かけます。地元では「どんきゃんきゃん」とも呼ばれ、お祭りに参加していない子どもたちも、「どんどんきゃんきゃん、どんきゃんきゃん」と、鐘と太鼓の音色がどこからともなく聞こえてくると、どんきゃんきゃんが来たと言って、その音に耳を傾けます。
- 大和町で行われる鷹尾神社風流は、祀られている神功皇后がこの地に上陸した際、地域住民が歓迎して披露した士気を高める破牟耶舞(はんやまい)を踊っていると言われています。
- 500年ほど前から続く上宮永の風流。その昔、日照りが続き困り果てた人々は鉦と太鼓を打ち鳴らし、天に雨乞いを始めました。すると、雨が降り始め風流の効果が。田中吉政の干拓事業で失敗が続くと、吉政の要請を受け、村人たちは、工事現場で鉦や太鼓を打ち鳴らし鼓舞しました。その甲斐あってか、難工事といわれた工事も無事完成に至りました。その名残として今も風流が奉納されます。
- 享保年間の飢餓を期に始まったとされる北徳益の風流は、幾度かの中断を経て、今も受け継がれています。小・中・高校生の3名の子どもたちが太鼓を打ちながら、1番~4番まである舞を踊り、1日かけて行政区内の70軒を回ります。
- 江上神社風流は、慶長12(1607)年に、田中吉政公が本土居上に新田龍神の石の祠を作ったのをきっかけに始まりました。昭和53年に一時途絶えましたが、平成23年、33年もの休息期間を経て復活しました。5人の男の子が3人ずつ交代しながら舞を踊ります。
- 今古賀の風流で使われているお面には、森如野師という女流能面師の熱い思いが。九州各地に伝わる神楽面や風流面が傷んで使えなくなるのを惜しみ、自ら申し出て弟子とともに多数の能面を奉納した森如野師。その数実に百面以上にのぼり、伝来の名品に一歩でも近づくことに生涯をかけました。お弟子さんとともに作られたお面が今古賀の風流では使われており、中でも鬼の面は子どもたちの憧れになっています。
- 昭代古賀地区で行われる日子山神社風流は、元和年間(1615~1633)に古賀村境の沖の端川に藁を被った大臼が流れ着いたことに始まります。大臼の中から出てきたのはこうこうと輝く鏡。村人はその鏡を日子山神社に奉納し、後世に伝えるために風流を始めました。日子山神社風流は、その独特な衣装が特徴で、赤、青、黄、緑などさまざまな色紙を折り重ねて作られたシャグマに、裃(かみしも)をつけた鼓打ち、紋付袴に身を包んだ御神幸行列が歩きます。
- 室町時代から始まったと言われる藤吉風流は、村の守護龍「竜神」に五穀豊穣、無病息災、家内安全を祈願して奉納されます。独特の衣装に身を包み、3名1組になた子どもたちは鉦と太鼓を打ち、翁(おきな)、媼(おうな)、きつね、鬼とともに舞い、地区の神々に奉納しながら地区内を練り歩きます。
- 風流の練習は、保存会の大人たちを中心に本番の1ヶ月前から始まります。学校から帰ると子どもたちはお宮で練習に励みます。一見簡単そうに見える太鼓や鉦も、なかなか難しく子どもたちは真剣な表情で練習に取り組みます。
- 準備に追われるのは、子どもたちだけではありません。祭りで使うしめ縄や人形、御神体作り。そして、神社に大きな旗を立てる作業も男性陣を中心に行われます。皆で、声を掛け合いながら作り上げるかかせない共同作業です。
- 地域の女性たちも衣装の準備に加え、風流前日の神事に使用する烏帽子型の「おごくさん」というおにぎりのようなお供え物や、風流当日の昼ご飯や夜ご飯を作ります。毎年違う隣組によって作られ、地域の方々と料理を通じてふれあえることも楽しみの一つです。
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10月・神無月
白秋祭におにぎえに、祭りに染まる秋の柳川。まち歩きにも気持ちの良い季節です。
柳川の秋の大祭、三柱神社のおにぎえ/夜もどろつくどんや踊り山で大賑わいのおにぎえです/柳川ではどんきゃんきゃんと呼ばれる、伝統の祭り、風流では独特の衣装に身を包んだ子どもたちが鉦と太鼓の音色に合わせて舞を披露します/風流の前には神社で神事が行われます/浄華寺では安東省菴の顕彰祭が/日吉神社の横にある柳城公園では木村緑平の句碑祭が行われます/この秋で第4回目を迎える水郷柳川ゆるり旅では地元の人々が考えた30プログラムの体験が楽しめます/10月も終わり頃になると白秋祭の準備が始まります