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  •  北原白秋は、時代を超えて人びとの心に残る作品を数多く残した詩人であり、童謡作家であり、歌人です。柳川は、その詩聖、白秋が生まれ育ったまちです。   
  •  沖端にある白秋生家は、母屋を全国から募金を募る運動によって復元したもので、記念館とあわせ、その激動の人生と人間像に迫る展示は心を揺さぶります。
  •  明治18年(1885)、酒造業を営む北原家に生まれた白秋は、「トンカジョン(大きな坊ちゃん)」と呼ばれ、6人の平家落人が漁師町をつくったという「六騎伝説」が語り継がれる沖端で華やかな少年時代を過ごしました。有明海を通じて行き交うものと人。生命力と天性の明るさに富んだ作風は、このまちそのものでした。
  •  しかし、白秋が16歳の時、大火で酒蔵が全焼し、家業は傾きます。傷心の白秋は没頭していた詩歌の創作へとさらにのめりこみ、やがて家出同然で上京。与謝野鉄幹、石川啄木といった才能とも交流しながら、26歳の時に書き上げた処女詩集『邪宗門』の耽美的な表現で賞賛をあびます。その2年後に出した詩集『思ひ出』は、故郷柳川と破産した実家に捧げる懐旧の情で、白秋の名を世に知らしめました。 
  •  白秋がずっと抱いていた、帰りたくても帰れない故郷柳川への思い。されど、昭和3年、20年ぶりの帰郷を柳川の人びとは熱狂的に迎えます。
  •  この生家は、明治初期の商家のたたずまいを残しており、今にも少年白秋が現れそうな、白秋の息吹さえ感じられます。


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  •  57歳の生涯で2万点以上もの作品を残した白秋は、病床にありながらも作品を作り続けていましたが、昭和17(1942)年11月2日、家族が病床の窓をあけて新鮮な空気を入れた朝、「ああ、蘇った。新生だ、新生だ隆太郎、この日をよく覚えておき、ああ素晴らしい」という言葉を残して亡くなります。
  •  絶筆となった『水の構図』に、「柳河は我が詩歌の母體」と遺した白秋。柳川では今、その白秋を偲ぶ「白秋祭」が毎年11月1日から3日までの三日間行われています。昭和27(1952)年の白秋没後10年祭が白秋祭のはじまりとなり、平成24年、60年目を迎えました。
  •  白秋祭では、多くのどんこ舟が一斉に集まり、宴をしながら川下りを楽しみます。掘割沿いの特設ステージでは、地元の人びとによる5月の水天宮祭りで子どもたちが披露するお囃子や「おにぎえ」の「どろつくどん」など、伝統芸能などが披露され、子どもたちによる花火の歓迎と「よう来めしたのも〜」の声が続きます。かと思うと、かがり火や提灯に照らされての夜の静寂と、舟に乗り込んだ人びとを心行くまで楽しませてくれます。
  •  舟の最終地点では、打ち上げ花火があがります。照明が落ちると、お祭りに参加してくれた事を喜ぶかのように、たくさんの花火が打ち上げられ、水面に映り込む、柳川ならではの晩秋の花火です。 
  •  水上パレードが終わると、舟を降り、白秋詩碑苑へ。詩碑苑へ向かう道端には、灯明が置かれ、穏やかなあかりに導かれて詩碑苑へ入ると、白秋の詩の朗読が聞こえてきます。白秋が好きだったお酒を、碑へと献酒する人びとの列。華やかなパレードとは逆の、静かな時間です。

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  •  命日の2日に行なわれる白秋祭の式典では、白秋の肉声による「思ひ出」が放送されます。
  •  「思ひ出」が書かれる頃、東京にいる白秋の元へ家族は故郷を離れてやってきました。故郷に居場所がなくなってしまう悲しみ、故郷での思い出をうたい、白秋の名を世に知らしめたのでした。白秋の優しい声に涙ぐむ人も。碑の前には、カラタチの垣根があり、4月半ばになると小さな白い花がいっぱいに咲きます。
  • からたちの花が咲いたよ。
  • 白い 白い 花が咲いたよ。
  • からたちのとげはいたいよ。
  • 青い青い針のとげだよ。
  • からたちは畑の垣根よ。
  • いつもいつもとほる道だよ。
  • からたちも秋はみのるよ。
  • まろいまろい金のたまだよ。
  • からたちのそばで泣いたよ。
  • みんなみんなやさしかったよ。
  • からたちの花が咲いたよ。
  • 白い 白い 花が咲いたよ。
  •  柳川を愛してやまなかった、その心を感じ、白秋が柳川の人びとの心の中にいつまでも生きていることを知って、静かな感銘を受けるお祭りです。


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柳川おでかけWeb
表紙スライドショーの写真のご紹介

11月・霜月
北原白秋を偲び、イベントの多い柳川の風景です。

白秋水上パレードにて、提灯トンネルをくぐる。/北原白秋生家にある全身写真/掘割沿いの紅葉/柳川の小路にある大きな銀杏の木/後輩たちが白秋の歌/水上パレードの終着点での花火は圧巻です。/立花宗茂公の妻誾千代姫君のお墓があるお寺の紅葉/琴奨菊関も少年時代に出場した雲龍相撲大会


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